腱鞘炎になると、指や手首を動かしたときの違和感や痛みを感じるようになります。
腱鞘炎は放置して病気が進行してしまうと、治療をしても関節が固まってしまう可能性があるため注意が必要です。
また、治療をしても再発を繰り返すようになってしまうこともあるので、できるだけ初期の段階で対応する必要があります。
以下では、腱鞘炎になるメカニズムを説明した上で、腱鞘炎の症状や痛みを緩和するために患部を冷やすことが重要であることを紹介していきます。

腱鞘炎になるメカニズム

腱鞘炎とは、何らかの原因で腱が通るトンネルとなる「腱鞘」と呼ばれる組織が炎症を起こして肥厚(ひこう)・狭窄(きょうさく)してしまい、そこを通る「腱」がスムーズに通過できなくなった状態のことをいいます。
簡単に言えば、腱と腱鞘が擦れ合って、その部分が炎症を起こした状態のことです。腱鞘炎は、手指を酷使することによって生じやすい病気であるため、パソコンやスマートフォンなどの操作を行うなど、同じ姿勢で同じ作業を長時間行ったりすると発症しやすくなります。
指を曲げることができるのは「腱」のおかげです。
筋肉の伸縮または伸展すると、腱が媒介となって骨や関節を動かしています。
そのため、筋肉を動かして関節を曲げようとすると、腱には大きな負担がかかります。
このように、腱は筋肉が骨や関節に力を伝えるための「紐」のような機能を果たしていますが、腱の周りには「腱鞘」と呼ばれる組織があり、途中で腱が浮き上がってしまうのを防ぐ「滑車」のような役割を果たしています。
この腱鞘は、手のひら側の指の関節部と手関節部に存在しており、腱の働きをサポートしています。
しかし、この腱が通るトンネルである腱鞘が何らかの原因で炎症を起こして、肥厚(分厚くなること)したり、狭窄(狭くなること)してしまうと、腱鞘の中をスムーズに腱が通過できなくなってしまいます。
これが腱鞘炎の症状が生じるメカニズムです。
そのため、腱鞘炎とは、広く腱と腱鞘が擦れることで生じる炎症を総称する名称です。
一口に腱鞘炎と言っても、腱鞘炎が生じている箇所によって異なる名前が付けられています。
バネ指とは

例えば、指を曲げるための屈筋腱の部分に炎症症状が生じる代表的な腱鞘炎としては、「バネ指」があります。
また、指を伸ばすための伸筋腱の部分に炎症症状が生じる代表的な腱鞘炎としては、「ドゥケルバン腱鞘炎」があります。
「ばね指」とは、指の腱鞘部分で生じる炎症で、引っかかった指を無理に伸ばそうとするとまるでバネのように、腱が狭窄部を通過した時点で急に伸びてしまう状態のことを言います。
発生部位は、手のひら側の指の関節部分で、母指に症状や痛みが起きることが最も多いですが、他の指にも症状や痛みが起きることがあります。
ばね指となると、指の付け根部分に腫れ・痛み・熱感を感じるようになります。
ばね指の症状が進行してしまうと、腱鞘の内部が炎症によって狭くなってしまい、そこに腱が引っかかってしまうため、指の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなってしまいます。
ドゥケルバン腱鞘炎とは
一方、「ドゥケルバン腱鞘炎」とは、手関節に置ける代表的な伸筋腱炎の一つで、親指を伸ばすための伸筋腱が手関節の親指側のトンネルによって狭窄された状態を言います。
特に、更年期または妊娠出産期の女性に多く見られる病気です。
手を広げて親指を反らせると、親指から手首にかけて2本の腱が浮き上がります。
ドゥケルバン腱鞘炎はこの部分の腱に炎症が生じる腱鞘炎です。
ドゥケルバン腱鞘炎になると、手首の痛みと腫れが症状として現れるようになり、物を掴んだり握ったりすると痛みを感じるようになります。
また、親指を動かすと手首の親指側に痛みを感じるようになります。
初期症状として、手首を動かす際に親指の付け根の部分にだるさや違和感を感じたり、親指の根本が腫れて押すと痛みを感じるようになります。
腱鞘炎は冷やすのが効果的!

腱鞘炎は手や指の使いすぎが原因となって生じる病気であるため、できるだけ患部を使わずに安静にすることが大切です。
患部の安静を確保した上で、手や指の関節に違和感や痛みを感じるような場合には、まずは患部を冷やして対応します。
手や指の関節の可動範囲を制限することによって、炎症症状の進行は防ぐことができます。
しかし、サポーターやテーピングを活用して患部の安静を確保したとしても、サポーターやテーピングそのものは腱鞘炎そのものを治療するための対応ではないため、痛みが続くようであれば、専門的な知識を持った医師に相談し、適切なアドバイスを受けるようにすることが大切です。
腱鞘炎になると、その初期症状として患部に熱感を感じることがあります。
それは腱鞘炎による炎症症状であるため、炎症を和らげることを目的としてアイシングを行うことが有効と言えます。
アイシングを行う際には、氷嚢(ひょうのう)やビニール袋に氷を入れた状態のものを患部に当てるようにします。
腱鞘炎の際に患部を冷やすことによって炎症症状を抑制したり、患部の血液量を減少させることによって痛みを緩和する効果が期待できます。
また、消炎鎮痛剤入りの湿布薬で痛みがある部分を冷やすことも効果的です。
湿布薬の冷却作用によって、患部の炎症や痛みを緩和することができます。