この滑液包が炎症を起こすと痛みが生じたり、熱感を感じるようになります。これが一般に滑液包炎と呼ばれる疾患です。
以下では、滑液包炎に関する一般的な治療方法について簡単に説明し、滑液包炎と似た疾患について紹介した上で、滑液包炎に対する手術治療を説明していきます。

滑液包炎の治療の多くは対症療法・理学療法

滑液包炎は軽度であれば自然に治癒することもありますが、滑液包炎を繰り返すなどして、症状が慢性化すると強い痛みを発するようになり、関節部分の可動域が制限を受ける場合があります。
そのような場合には、手術治療によって滑液包を摘出する治療が行われます。ただし、滑液包を摘出する手術は難易度が高いため、きちんと設備が整い、専門的な知識がある整形外科などで治療を受けることが大切です。
滑液包炎の治療の多くは、対症療法で患部の安静を保つようにする場合がほとんどです。
それでも痛みがひかない場合などには、抗炎症剤であるステロイド注射を行います。
その際、必要に応じてサポーターやテーピング、包帯などを用いて局所の安静を保つように治療が行われることがほとんどです。
その上で、理学療法を取り入れ、患部周辺の筋力を鍛える治療も行われています。
滑液包炎の治療は、上述のような治療が主要な治療となりますが、手術治療が行われることもあります。
滑液包は、皮膚と骨との間にある袋であるため、その多くは、すぐ皮下に存在しています。
しかしながら、すべての滑液包がすぐ皮下にあるわけではありません。
滑液包炎に対する手術治療は難易度が高く、滑液包を手術によって摘出したとしても症状が改善しないような場合もあるため注意が必要です。
滑液包炎と似た疾患に注意
滑液包炎と似たような疾患には、「ガングリオン」・「類表皮嚢胞」・「脂肪腫」・「疼痛のある腫瘍」・「軟部腫瘍」・「高悪性軟部腫瘍」などがあります。
滑液包炎と同じように患部に痛みが生じるなど、症状が似ていることから、きちんと区別することが大切です。
「ガングリオン」は、手関節の背側に発生する小指大の辺縁平滑な硬い腫瘤であることがほとんどです。
ガングリオンは、内部でゼリー様の液体が貯留した状態です。一方、「類表皮嚢胞」は、新陳代謝によって表皮から剥がれ落ちる垢などの老廃物が皮膚や皮下に溜まる嚢胞性病変のことを言います。
類表皮嚢胞になると、傷口がなかなか治らなくなります。さらに、「脂肪腫」は比較的柔らかい皮下にみられる腫瘍のことを言います。
中には比較的硬い筋肉の内部で発生することもあります。
いずれの場合でも、臨床所見、CT・MRIなどを用いた画像所見、組織所見を行って総合的に診断します。
特に、脂肪系腫瘍の場合、CTやMRIなどのような画像所見が精度も高く、多く行われている検査です。
例えば、MRIを行うことで、比較的かんたんにガングリオン・粘液性腫瘍・類表皮嚢胞は区別することができます。
上で挙げたような典型的な疾患以外は、生体検査を行うことによって区別します。
針生検は、局所麻酔をして血管や神経を傷つけないようにしながら、14ゲージの穿刺針で患部の組織を採取します。
皮下の深い部分から検体を採取する場合には、超音波やCTガイドなどを使用して針と腫瘍の位置を確認しながら検体を採取します。
滑液包炎に対する手術治療
滑液包炎に対する手術治療は、手術箇所によりますが全身麻酔下で行われます。
手術室で止血帯を用いて神経を損傷しないように滑液包を切除していきます。
ただし、手術治療をしても再発する可能性は十分に考えられます。
滑液包に細菌などが侵入している場合には、その箇所の病変を切除するだけだけではなく、感染箇所を十分に消毒しておかないと炎症症状が再発する危険性もあります。
感染の場合は切開し中に溜まっている膿を除去(排膿)しなければなりません。
特に、リウマチの合併症や細菌感染によるものである場合には、その原因となっているリウマチや細菌感染を十分に治療した上で、滑液包を切除することが大切です。
もちろん、感染が確認できないような場合でも、上で紹介したようなが治療が有効でなかった場合には、手術治療によって滑液包の切除を行うこともあります。
まとめ
滑液包炎に対する手術治療は非常に難易度の高いリスクであり、それを行う医師にも相当な技術が求められます。
そのため、信頼できる医師のもとで手術治療を行ってもらうようにすることが大切です。
滑液包炎に対して手術治療が行われることが非常に稀であることを十分に認識した上で、それでも手術治療を希望するかどうかを十分に医師と相談する必要があります。