膝に水がたまると、関節部分の炎症症状が進行して痛みが強くなる可能性もあるので注意が必要です。
この記事では、膝に水がたまる原因について詳しく説明していきます。

膝に水がたまってしまう原因

膝に水がたまる原因は様々なものが考えられます。
厳密には、膝に水がたまると言っても、本当に水がたまっているわけではありません。
水のように見えますが、膝にたまっているのは関節液です。
膝に水がたまるというのは、医学的には膝の関節内に液体が貯留した状態のことを言います。
関節液は、大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)の間や周辺に貯留することが多く、これは、関節水(血)症とも呼ばれる疾患として認められています。
膝関節にある関節液は、正常な場合、淡黄色透明で粘調性があり、主にヒアルロン酸やタンパク質などを含んだ液体です。
関節液は、関節内の滑膜の血管から、分泌されたり吸収されたりしています。
関節液は、関節の動きを円滑にする役割を担うとともに、関節軟骨の栄養源ともなっています。
また、膝の関節部分にかかる負担を分散させる機能もはたしています。
通常、膝関節の中に存在する関節液はおよそ3ml〰5ml程度ですが、関節に炎症症状やその他の病的な状態が生じると、関節液が増加し、60ml以上になることもあります。
関節に炎症などが生じると、この分泌と吸収のバランスが崩れてしまうことによって、必要以上の水がたまってしまうため注意が必要です。
これが膝に水がたまるメカニズムとなります。
つまり、膝に水がたまる原因は、膝関節部分に何らかの病変が存在していることが原因です。
膝に水がたまるようになると、膝関節の上部がブヨブヨとした状態となっているのが触ってわかるようになります。
症状がひどくなってくると、水がたまることで膝の形も変わってしまうことがあります。
最もよくある疾患が変形性関節症です。
変形性膝関節症は主に加齢が原因となって、膝関節部分の軟骨が摩耗し、その摩耗した箇所がトゲトゲとなって、滑膜組織を刺激するようになった結果、膝の痛みを引き起こす疾患です。
変形性関節症になる主な原因は加齢であるため、どんな方でも年齢を重ねると膝関節症となる可能性があります。
膝に水がたまる基本的な要因は、膝関節やその周辺に存在している滑膜組織が、何らかしらの病変によって炎症を起こして、滑膜(かつまく)から過剰に分泌される関節液が、膝の上部にたまってしまうからです。
滑膜組織が炎症をおこす原因としては、関節内の軟骨や骨が摩耗して、ささくれ状になり、骨の表面からはがれ落ちたかけらが関節包(かんせつほう)を刺激する事が主な原因となっています。
そのため、滑膜組織の炎症症状を改善していかないと、膝に水がたまる症状がなくなることはありません。
また、膝関節で炎症が起こってしまうと、関節包からサイトカインという炎症を強める化学物質が放出されるため、さらに炎症症状が進行するようになります。
一言で膝に水がたまると言っても、膝関節に貯留する液体は一様ではなく、むしろ、貯留する液体の性質は膝関節の炎症症状や疾患によって異なります。
膝に水がたまってしまう原因はもちろん変形性関節症だけではなく様々な疾患が考えられます。
関節リウマチなどが原因となって膝に水がたまっている可能性もあるため、正確な診断が必要となります。
外傷の場合には、関節内の骨や靭帯が損傷を受けて出血することがあるため、水ではなく血がたまる場合もあるため注意が必要です。
膝に水がたまるとどうなる?
膝に水が貯留した状態となると、関節内部の圧力が高まってしまうため、膝関節部分が不安定となります。
膝関節に水がたまった状態になると、ひどいときには歩行が困難になることもあるため注意が必要です。
膝に水がたまるのはどうしたらなくなる?

膝に水がたまる基本的な要因は膝関節周辺の滑膜組織が何らかの原因によって炎症を起こしてしまうことであると説明しました。
膝関節部分にある関節液は、滑膜組織から分泌されたあと、体の中に自然に吸収されていくため、通常であれば問題となることはありません。
しかし、滑膜組織に何らかの刺激が加わることによって、滑膜組織は膝関節部分の負担を軽減するために関節液を多量に分泌し続けます。
これによって、膝関節にかかる負担を軽減しようとしているのです。
そのため、湿布などの外用薬によって膝に水がたまるのを防ごうとするのはあまり効果が見込めません。
また、整形外科などの病院で膝にたまった水を直接注射をして抜くという方法もありますが、基本的には膝関節にある関節液を抜いているだけであるため、根本的な原因を治療することにはありません。
結果として、膝に水がたまるのを防ぐためには、きちんと膝関節の炎症症状を治療することが重要です。
炎症の症状がある限り、膝関節部分に炎症症状を抑えるために滑膜組織が関節液を出し続けるため、膝関節内の関節液が減るということはありません。
整形外科などで注射をして関節液を抜いたとしても、なかなか膝の痛みがひかなかったり、水がなかなかなくならないのはそのためです。
膝関節部分の何らかの疾患を治療する最も根本的な治療としては手術治療が挙げられますが、膝関節部分は非常に複雑で、手術を行う医師には専門的な知識だけではなく、相当な技術と経験が必要となります。
上手な医師であれば、安易に膝関節部分の手術治療を勧めるということはありません。
なぜなら、膝関節部分の手術は非常に難易度も高く、患者さんにかかる負担が大きいからです。
そのため、多くの場合、膝関節部分の治療を行うにあたっては対症療法的な治療が行われることがほとんどです。
一般には、薬物治療や運動療法などが行われます
薬物治療では、膝関節の炎症症状を抑えるための薬を服用することによって、炎症症状を緩和していきます。
ある程度の効果を見込むことができますが、痛みなどの症状を緩和することはできても、根本的な原因を改善することはできないため注意が必要です。
なぜなら、薬物治療では、痛みの原因を消すことはできないので、必ず痛みは再発しますし、痛み止めをはじめとする薬をずっと使い続けなければならないことになってしまいます。
そのため、膝関節部分に水がたまってしまう場合でも、薬物療法に加えて、運動療法が用いられます。
運動療法では、筋力トレーニングやストレッチを行うことによって、膝関節周辺の筋力を鍛え、また、ストレッチによって筋肉の柔軟性を向上させることによって、膝関節部分にかかる負担を軽減する効果が期待できます。
それによって、膝関節にかかる負担もへり、炎症症状が緩和するという効果を得ることができます。
ただし、運動療法は闇雲に行えばよいということではありません。
専門的な知識のある医師や理学療法士、作業療法士などの指導のもとでトレーニングに取り組むことが重要です。
専門的な知識がないまま自己流でトレーニングをおこなってしまうと、膝関節部分の負担となり症状が悪化してしまう可能性もあるため注意しなければなりません。
筋力トレーニングやストレッチは膝関節に負担がかからないように行う必要があります。
薬物治療によって膝の痛みや炎症症状を緩和しつつ、筋力トレーニングやストレッチを専門家の指導のもとで行うことによって、効果的に膝の痛みを緩和することができるようになります。
膝の水を抜くのは治療のためでもある!
膝の水を抜くことは対症療法的な治療であるため、根本的な原因を取り除いているわけではないことを上では説明しました。
しかし、根治を目指した治療ではなかったとしても、膝の水を抜く病院は非常に多いです。
その理由は、膝の水を抜くことそのものにあるのではなく、水を抜いてその成分を調べることによって、膝関節に起こっている病変を特定することができるからです。
現在の医学では、膝関節部分にたまった関節液を分析することによって、ある程度正確に疾患を特定できるようになっています。
ただし、水を抜く場合には、何度も病院に通わなければならないため、それが患者さんにとって負担となってしまうことがあることも事実です。
しかし、治療を行わなければ膝の病変が十分に治ることはないので、自分で判断せずに、専門家の指導のもとできちんと早めに治療を行うようにすることが大切です。
まとめ
膝の水がたまってしまう原因は、膝関節部分が炎症を起こすことによって、滑膜組織を刺激してしまい、刺激を受けた滑膜組織が関節部分の負担を軽減するために関節液を増やすからです。
膝に水がたまってしまったら、できるだけ早く専門的な知識のある医師の指導のもとで、治療を開始することが大切です。