このような半月板損傷に対する治療としては、保存的治療と手術治療があります。半月板を損傷したからと言って、必ずしも手術が必要というわけではありません。現在では、半月板の緩衝機能を保存することが重要視とされているため、できるだけ半月板を保存するような治療が行われることが一般的です。
以下では、半月板損傷に関する諸症状について説明した上で、半月板損傷に対する治療とリハビリについて説明していきます。

半月板損傷の症状と痛み

半月板は、膝関節の中の線維軟骨という柔らかく弾力のある成分で構成された軟骨組織です。
この半月板は、大腿骨と脛骨の間に存在し、内側と外側にあるため、それぞれ「内側半月板」・「外側半月板」と呼ばれます。
関節の適合性を良くしたり、関節にかかる圧を分散させ、衝撃の緩衝機能を果たしている半月板は、大腿骨と脛骨に捻れるストレスがかかることによって損傷しやすくなります。
例えば、体重がかかった状態で膝を捻ったりした場合に半月板損傷(断裂)が生じます。
半月板損傷の形態は様々で、半月板が縦に断裂してしまう縦断裂、横に断裂してしまう横断裂、その他の損傷の形態である変性断裂といった形態があります。
半月板の損傷の多くはスポーツ活動中に生じますが、日常生活の何気ない動作などで損傷することもあります。
半月板を損傷すると、歩行時や膝関節を曲げたり伸ばしたりした時など、運動に伴う痛み(運動痛)が起こります。
特に、日常生活においては、階段を降りる際、あるいは膝を深く曲げる動作や、膝を完全に伸展した状態にしようとする動作の際に強い痛みが生じるようになります。
半月板損傷により断裂部分が運動する度に引っかかるようになると、屈伸や回旋運動の時に音がしたり、引っ掛かって一度止まり、乗り越えるとガクンと弾かれるように動き出す症状が現れます。
久を曲げ伸ばしした際に関節内で引っかかる感じがする「キャッチング」、突然膝が崩れるように力が抜けてガクッとなる「キビングウェイ」、断裂部分が大きくなり、関節のすき間にはさまると膝関節がロックされたように動かなくなる「ロッキング」といった症状があらわれます。
半月板自体には知覚神経が通っていないため、半月板自体が損傷を受けたとしても痛みを感じることはありません。
半月板が損傷すると、その周辺にある筋肉や関節を包み込んでいる関節包と呼ばれる組織が刺激を受け、関節の適合性が失われてストレスがかかることで痛みが生じるようになります。
半月板損傷を放置して慢性化すると、膝関節の部分に水が溜まったり、関節軟骨がすり減ってしまい、変形性膝関節症の原因となる場合もあるため注意が必要です。
半月板損傷に対する治療の種類

半月板を損傷した場合であっても、すべての場合に手術治療が必要となるわけではありません。
半月板損傷の可能性がある場合には、整形外科などの病院で適切な検査を受け、必要な治療に関する説明や予後の見通しなどについて診断してもらうことが大切です。
半月板損傷に対する治療としては、「保存的治療(保存療法)」と「手術治療(部分切除術や縫合術)」があります。
半月板損傷の治療においては、局所の安静、消炎鎮痛処置(湿布など)、リハビリテーションなどによる保存的治療によって半月板損傷による症状が改善していくこともありますが、上で説明したような半月板損傷の症状や痛みが改善しないような場合には手術治療が選択されます。
半月板の辺縁周辺には血流があり、辺縁周辺箇所付近の断裂であれば、手術治療を行わずとも保存的治療で十分治癒する可能性があります。
より具体的に説明すれば、半月板損傷における検診として、まず、損傷した半月板に沿った痛み(圧痛)があるかどうか、あるいは、膝を捻ることによって痛みが生じるか診ます。
半月板はX線を照射しても写らないため、レントゲンによる検査ではなくMRI検査が行われることが一般的です。
事前の検診および検査の結果、軽症の半月板損傷と診断され、血流がある箇所の半月板に損傷がある場合には、保存療法が適用されることが一般的です。
一方、血流がない箇所の半月板に損傷がある場合で、その箇所が痛みや引っかかりの原因となっているような場合には、半月板の切除手術もしくは縫合手術が適用されます。
半月板損傷に対する治療では、半月板は膝の軟骨にかかるストレスを減少するという重要な役割を担っているため、手術治療によって半月板の損傷箇所を切除するのではなく、できるだけ保存的治療することが重要です。
なぜなら、半月板の損傷箇所を一度切除しても、将来的に再び痛みなど、半月板損傷の症状があらわれる場合や膝の痛みに悩まされることがあるからです。
一度切除してしまった半月板を元に戻すことはできません。
そのため、半月板損傷に対する治療においては、できるだけ保存的治療で治療ができないかどうかをまず診断していきます。
半月板損傷の中でも早期に手術治療が必要となるのは、激しい痛みに加えて、半月板のひっかかりが原因となって膝が動かなくなってしまうといった症状がある場合です。
痛みが長く続いており、繰り返し膝に水が溜まるといった症状があり、日常生活やスポーツ、職業上で大きな支障がある場合には手術治療が必要となります。
半月板損傷手術の方法

半月板損傷手術の方法としては、損傷した箇所を切り取る「切除術」と損傷した箇所を縫い合わせる「縫合術」の2種類があり、関節鏡を使用した鏡視下手術が行われることが一般的です。
鏡視下手術では、膝の膝蓋骨(しつがいこつ)の傍に1㎝以下の穴を2つ開け、カメラと内視鏡を膝関節内部にある半月板の損傷した箇所にまで挿入します。
挿入したカメラの映像を見ながら、損傷した半月板の部位を切除、もしくは縫合していきます。
損傷した半月板を確認した際に、小さな断裂や治癒しない箇所に断裂がある場合にはその部分だけを部分切除します。
一方、治癒する可能性のある半月板の箇所に損傷がみられる場合には、半月板の断裂部を縫合します。
先にも説明したように、現在は半月板機能を温存することが大切であると考えられるため、関節鏡で半月板の損傷箇所を確認し、できるだけ縫合術による治療が行われます。
現在では、内視鏡が非常に進歩したことによって、小さな穴から半月板の損傷箇所だけを切除し、他の健常な箇所については温存することが多いです。
この方法であれば、手術を行った直後から歩行することも可能であり、手術後1週間程度で日常生活に支障がない程度まで回復することができます。
半月板切除術を行うと、短期的には、痛みや症状の改善が見込めるものの、将来的には、2次的に軟骨損傷を誘発しやすくなるため、スポーツ活動のレベルや生活の質が低下することが考えられます。
そのため、半月板の損傷した箇所が血行の良い箇所であり、受傷からあまり時間が経過していないといった一定の条件を満たす場合には、半月板を縫って直す縫合術が選択されます。
半月板切除術による手術治療ではなく、半月板縫合術による手術治療を行えば、半月板を切除せずにすむため、半月板の機能が損なうことがないというメリットがあります。
しかし、半月板縫合術による手術の場合でも、将来的に半月板が再断裂する可能性もあり、リハビリ期間も長くなってしまうというデメリットがあることには十分留意しておく必要があります。
半月板損傷に対する手術後のリハビリ

半月板損傷手術が終われば、そこで治療が終わりということではありません。
予後のためにも術後のリハビリが極めて重要です。
テーピングやサポーターの装着は、膝を撚るストレスを軽減させる効果があります。
スポーツ活動に復帰する際に着用することで怪我が起こることを防ぐことができます。
サポーターには様々な種類があるため、膝を撚るストレスを軽減する効果があるものを選択することが大切です。
半月板を損傷してから、日常生活ができるまでに回復する期間は1ヶ月半程度で済みますが、スポーツ活動に復帰できるまでに回復するためには、半月板切除術を行った場合には術後2~3ヶ月、半月板縫合術を行った場合には、術後4~6ヶ月のリハビリが必要となります。
半月板手術後のリハビリテーションの方法は、切除術か縫合術かにより大きく異なります。
半月板切除術を行った場合、関節軟骨への負担が大きくなってしまうため、関節の変形を避けることはできません。
したがって、一般的に、切除術の際に切除した範囲が小さいほど、術後の経過は良好です。
また、内側の半月板か外側の半月板か、切除または縫合部位・範囲によってもリハビリの方法は異なります。
さらに、軟骨損傷を伴った半月板損傷の場合には、リハビリを開始する時期は遅くなります。
そのため、半月板手術後のリハビリテーションのメニューについては、個別に膝の状態を評価し、傷病者一人ひとりに合ったメニューを決定することが大切です。