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変形性膝関節症とは

変形性関節症は、軟骨破壊によって局所の痛みと慢性的に増強する運動機能障害をきたす疾患で、変形性関節症の中でも変形性膝関節症は、特に罹患している方が多い疾患です。
変形性膝関節症の症状が悪化すると、疼痛の増加・歩行障害・日常生活動作の制限が生じるため、発症者の生活の質(quality of life: QOL)を悪化させる可能性があります。
この変形性膝関節症に伴う症状を緩和するために最もよく行われている代表的な治療法としては、「運動療法」や「薬物による保存治療」があります。
最近の研究結果に基づけば、変形性膝関節症に対して、薬物療法で用いられている非ステロイド非抗炎症薬やステロイド薬は優れた消炎鎮痛作用を発揮し、変形性膝関節症に伴う炎症症状を緩和する効果を有していると考えられています。
しかしながら、これらの薬剤は軟骨破壊を亢進させ、変形性膝関節症の進行を加速させてしまうことが明らかとされているため注意が必要です。
非ステロイド非抗炎症薬やステロイド薬は使った治療にはこのような副作用があるため、薬物療法による保存的治療ではなく、軟骨代謝を改善することによって変形性膝関節症の進行を抑制する効果があるとされる新しい治療法が期待されています。
それが変形性膝関節症に対してグルコサミンやコンドロイチン硫酸などいくつかの食品成分を利用する治療です。
グルコサミンって何?その効果は?

グルコサミンは糖の一種で、グルコースの一部の水酸基がアミノ基に置換されたアミノ糖です。
グルコサミンは動物の皮膚や軟骨、甲骨類の殻、キノコ類などに多く含まれています。
このグルコサミンは生体内において結合組織や軟骨組織に「グリコサミノグリカン」の成分として存在していて、これらの組織の強度や弾性を維持するために機能していると考えられています。
グルコサミンは自然界ではカニやエビなどのキチン質の主要成分として多量に存在しているため、キチン質を塩酸処理することによって脱アセチル化し、加水分解した後で精製されたグルコサミン塩酸塩がサプリメントとして使用されています。
グルコサミン塩酸塩が日本でサプリメントとして使用されるようになったのは1990年代頃からで、最近では大手食品メーカーだけでなく、製薬会社からもグルコサミン塩酸塩を使ったサプリメントが販売されるようになっています。
サプリメントを飲んだらどんな効果があるのでしょうか
グルコサミン塩酸塩またはグルコサミン硫酸塩によって、関節の痛みや関節炎に対する効果を医学的に明らかにしようとする研究論文は少なからず存在していますが、その研究結果はポジティブな(有効性があるとする)結果とネガティブな(有効性がないとする)結果の両方が混在していて、本当にグルコサミンが関節の痛みや関節炎に効果があるのかどうかについては明らかとなっていないのが現状です。
人間は摂取した物質がそのまま体中に行き渡るような構造にはなっていないので、サプリメントとしてグルコサミンを摂取したからといってグルコサミンがそのまま身体の各部位に配分されるわけではなく、その作用機序は非常に複雑であることから、本当にグルコサミンを摂取したからといって症状が改善されたかどうかを明らかとすることは非常に困難であるからです。
そのため、信頼できるグルコサミンの研究においては、現在までのところ軽度の変形性膝関節症の治療においてのみ有効性が示されているに留まっています。
しかし、変形性膝関節症に関する重篤な症状が改善したという研究論文はなく、グルコサミンによる変形性膝関節症に対する予防効果においても同様の評価がなされています。
結果として、日本で中心的に研究されているグルコサミン塩酸塩は「国の医薬品的効能効果を標榜しない限り医薬品と判断しない成分本質」と分類されています。
これは、「食薬区分」において、医薬品的効果を謳わない限りにおいて、「食品衛生法」の管理下におかれるという意味です。
「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に分類されているものは、「医薬品医療機器等法(旧薬事法)」の規制の対象となることから、いわゆる健康食品(サプリメント)として使用することはできません。
要するに、グルコサミンは、より厳格な「医薬品医療機器等法(旧薬事法)」に抵触し、その規制を受けてしまうため、「医薬品的効能効果を標榜しない限り医薬品と判断しない成分本質」に区分されているという意味においても、医学的にその効果が明らかとされているとは言えず、そのためグルコサミンの効果については強い主張がしにくくなっています。
そのため、グルコサミンは日本では薬ではなく、あくまでも食品として位置づけられています。
グルコサミンの効果は大変穏やかで、薬ほど効くとは言えません。
そして、グルコサミンの効果そのものは、サプリメントの摂取を止めてしまうとなくなってしまいます。
この点をきちんと理解しておくことが大切です。
コンドロイチンって何?その効果は?

コンドロイチン硫酸が減少してしまうと、例えば、関節では軟骨の弾性が失われてしまい、最悪の場合軟骨がすり減って骨同士が直接接触するようになってしまいます。
その結果として、変形性膝関節症を発症する可能性があります。
変形性膝関節症に対して、グルコサミンと同様にコンドロイチン硫酸を用いた新しい治療にも注目されています。
コンドロイチン硫酸は、軟骨、結合組織、粘液に含まれるムコ多糖類の一種で、動物の細胞外基質に多く存在しており、生体内でコラーゲンやその他のたんぱく質と結合して存在している成分です。
コンドロイチン硫酸には、カルシウムの代謝・物質の透過・水分の保持及び調節機能があります。
それに加えて、膝関節などの関節などにおいては、物理的な刺激に対する吸収剤としても重要な機能を果たしています。
その代表例として、コンドロイチン硫酸は関節軟骨に弾性を与え、ヒアルロン酸などと協働しながら関節の動きを滑らかにしています。
そのため、コンドロイチン硫酸は、関節炎や炎症の原因を取り除き、軟骨の生成を促すという働きがあると考えられています。
コンドロイチン硫酸は、関節痛や神経痛の症状緩和等の目的で医薬品に使用されている成分です。
先に説明したグルコサミンと同様に、コンドロイチンも「医薬品的効能効果を標榜しない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」に区分されています。
コンドロイチン硫酸の原料としては、牛や豚など哺乳類も用いられていますが、現在は主にサメ・サケ・イカなどの海産物から抽出されています。
コンドロイチン硫酸は、一般に、骨の形成を助けたり、動脈硬化や高血圧を予防するなどと言われていますが、コンドロイチンは関節の痛みといった症状に対して確実に効果があるとは言えず、現代医学においても見解の一致をみていないのが現状です。
変形膝関節症に効果がある?サプリメントまとめ
コンドロイチン硫酸は医薬品(薬)ではなく、あくまでも食品(サプリメント)として販売されているものであることをきちんと認識しておく必要があります。
コンドロイチン硫酸は、サプリメント(食品)として適切に用いれば恐らく安全であると考えられていますが、妊娠中・授乳中の安全性については十分なデータが蓄積されているわけではないため使用は避けるべきであると考えられています。